映像クリエイター/デジタルアーティスト

海を恐れろ。

そう、親父は言う。

暗く深い水底は、覗き込んでも見えやしない。

そこにほんの少し映る影に狙いを定め、銛を打つ。

それが、親父が祖父から教わり、俺が親父から教わった唯一の業。

陸の上で、気に入らない奴に蹴りを喰らわす方がずっと楽だ。

暗い夜道、ランタンの下にちらつく影を追い、拳を突き刺す方がずっと。

そう、思っていた。

考えもしなかった。

闇夜の更に奥。

光も届かない程の暗闇から、こちらを覗き込む目があるなんて。

海を恐れるというのは

――見えないものを恐れろと、そういう意味だったのか。

噴き上げる煙が掻き消え、ランタンは地に落ちた。